お囃子について

2009年10月1日更新

太鼓の特徴


一風変った太鼓の打ち方

福井県嶺北から加賀地方にかけては、曲に合わせて太鼓を打つ「曲太鼓」が伝統的に盛んです。
また、長胴太鼓を直に地面に平置きして一人は三つ打ちで「小バイ」を、一人は三つ打ちと曲に合わせる「大バイ」を打つスタイルもこの地方の伝統とされます。
勝山左義長ばやしの太鼓もこの伝統を色濃く残しています。
その中でもこの太鼓だけの特徴があります。 @「座り方」として太鼓に座る事。 A長襦袢を着ること。 Bバチが短い事 勝山左義長ばやしの特色は、「座り方」・「地打ち方(小バイ)」・「浮き方(大バイ)」との三位一体の浮かれ太鼓が特徴です。
打ち手は伝統的に襦袢を着た男の役でしたが、最近は子供や女性の打ち手も多くなってきています。
浮き太鼓のすばらしさは、ベースとなる「地太鼓」が鳴り出せば瞬時にして入り込める楽しさ、そして一人一人が個性ある仕草を披露することです。 その場の雰囲気にとけ込んで短時間の主役になりきることが要求されます。単純であるがゆえに、ひじょうに奥深いものがあります。

勝山左義長ばやしは郷土芸能として受け継がれています。時代の流れと共に何回かの変遷もありましたが、今日まで伝統の所作を重んじ、パフォーマンス的な下作な行いを慎み、先人の文化を守っています。
しきたりをはみ出し過ぎると(おど芸)になってしまいます。おど芸と郷土芸能は紙一重です。 また、細い長いバチで細かく打ち込む事は左義長(浮き太鼓)でなく左義長以外の曲太鼓になってしまいます。そういう面で浮き太鼓と曲太鼓も紙一重です。
あくまでも勝山左義長ばやしは郷土に育くんだ伝統芸能の(浮き太鼓)であることを信念に今後も継承していきたいと思います。


太鼓とバチ

太鼓は長胴太鼓を床に直に平置きします。
バチは短く、一尺(約30cm)までのものを使用します(25cmくらいが多いようです)。バチの素材ではナラや桜のような硬い木を使用します。ベテランの方は、黒檀、紫檀などの銘木も多く使用しています。
短いバチを使用しているのは、太鼓に人が座るために狭い空間でバチが邪魔にならないこと、踊りながら狭い櫓の中で浮かれるのに都合が良いものと想像されます。 他の太鼓の様な長いバチやテープを巻いたりすることなどは好ましくありません。


「座り方」太鼓に腰掛ける人

勝山左義長ばやしの特色のひとつで、太鼓には人が必ず腰掛けます。
腰掛ける人はお客さんに背を向けて腰掛けます。太鼓に腰掛けるのは音と調子にこだわるうえで、大変重要な意味を持ちます。
小刻みで軽快なリズムが独特の「浮き太鼓」では、浮かれ感を出すために太鼓を腰掛ける重みによって、太鼓特有の長い響きを押さえ、
より遠くまで届きやすい低音に変えています。
ベテランともなれば打ち込み(大太鼓)が強い人には深く腰掛けます。または子供のように打ち込みの弱い人には浅く加減をして座ります。
腰掛ける人の衣装は、長襦袢を着て頭の後ろにお面をかぶり(おかめ・ひょっとこ)左右に頭を振ります。
おはやしと調子を合わせて地太鼓と浮き太鼓とも違和感なく調和を持たせてることが大切です。
練習などでは座ることを省略して押さえ棒や砂袋を使用していますが、勝山左義長では人が座ることが正統です。本番のまつりでは極力太鼓に人が座っていただきたいです。
※勝山左義長以外では神聖な太鼓には座ってはいけません。


「地打ち方」小バイ

勝山左義長の地打ちは特に特徴のあるものです。いわゆる三ツ打ですが、「トントコ、トントコ」と初めの一打を強めに打ちます。
これが逆打ち「トコトン、トコトン」となることを「うら地」「うま地」などと呼び、好ましくありません。
また、他の太鼓の様にはねる様には打たず押えるように打ちます。「押さえ地」と言います。はねる地を「はね地」と呼び好ましくありません。
地打ちの役割は大太鼓の人をいかに楽しくリズムカルに浮かせるかが重要なところです。
オーケストラでいうなら、指揮者の役割と同じで、大太鼓だけではなく、 三味線などのお囃子のテンポなどにも気配る必要があります。
地打ちは特に重要であり最も難しく、その櫓全体のお囃子を左右するものであり、最も要(かなめ)の人がその役を担います。


「浮き方」大バイ・大太鼓

大太鼓は、打つと言わず「浮く」と呼ぶのが勝山左義長ならではの特徴です。
浮き方は形にとらわれず自由奔放に地打ちやお囃子さん達と楽しみながら浮きます。
身のこなしについては自然な楽しさと面白さ(こっけい)な表現が求められます。
また叩き手の交代時、待機者との協調性(からみ)は盛り上げの一翼を担うものです。衣装は長襦袢で頭にはちまき、またはお面(おかめ、ひょっとこ)をつける事もあります。
お囃子と地に合わせる事以外は特に決まった打ち方※(リズム)があるわけではなく。全てがアドリブで打たれます。
最も上手い浮き手は太鼓を打たなくても、太鼓の音が聞こえてくるような浮き方の人がベテランとも言われます。
櫓によっては"何曲まわし"として決めている場合もあるが、基本的に打ち手交代の決まりは無く、その場の雰囲気やタイミングなどで決められます。 小バイと大バイが同じ太鼓で打つ点、アドリブである点、などは北陸嶺北地方で行われている野良打ちとの共通点もみられます。

※幼稚園、保育園で左義長太鼓を指導する場合は決まった打ち方を採用している場合もあります。子ども会では基本打ちのリズムを初めに指導する場合が多くありますが、あくまでも基本打ちであり、最終的には個人のオリジナリティが重要です。


一番太鼓(ふれ太鼓)

まつりの初日の一番初めに打つ太鼓のことで「ふれ太鼓」ともいいます。使用するバチはネコヤナギの木や竹を細く割ったものを使用します。
昔は上袋田区の櫓で朝6時頃に打たれていました。現在では各地区が持ち回りでする様になりました。
祭りの趣旨から当番である櫓の一番太鼓の後に、他の櫓がお囃子と太鼓を行っていただきたいです。

〔参考文献等〕
「お囃子のしおり」勝山左義長ばやし編
「福井県嶺北地方の和太鼓について」 田中準一氏
(Wikipedia)野良打ち

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